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士業の議論・考察

[議論/考察]戸籍制度について(取得コストや保存期間、所有者不明土地問題との関係)

議論6:戸籍制度

今回は、日本の戸籍制度について、4人の現役司法書士・税理士で話した内容をご紹介致します!

誠実先生
誠実先生
戸籍については、『戸籍とは?〜現在戸籍、原戸籍、除籍との違いや取得できる場所について〜』という記事で詳しく紹介していますので、こちらも是非ご一読ください。

戸籍制度と戸籍の取得

誠実先生
誠実先生
日本では古くから家単位で管理された戸籍制度が採用されていたため、戸籍をたどればその人の出生から死亡までの相続関係を正確に把握できることは、戸籍制度を採用しているメリットといえますね。
電卓先生
電卓先生
個人単位で管理された戸籍制度だと、今の日本の相続法に準じた相続関係を把握するのは大変そうですよね。
誠実先生
誠実先生
(2020年)現在は、戸籍を取得するには、本籍地のある役所に請求して取得する必要がありますね。戸籍を集めるのは大変ですが、集めさえしてしまえば、相続に必要な情報は戸籍に書かれているので、とても重宝します。ただ、郵送で戸籍を請求する際に、支払い方法が”小為替”だけというのはどうしたもんかと…。50円の小為替を買うにも100円の手数料がいりますしね…。
3人の先生
3人の先生
電子納付も普及している今の時代に、小為替でしか支払えないというのは不便だよね。
電卓先生
電卓先生
今は本籍地のある役所でしか戸籍が発行されないので、遠方の役所に請求する場合は郵送で小為替を同封して請求することになりますが、戸籍法の改正によって、数年後には全国どこの役所でも戸籍を取得することが出来るようになりますね。

参考リンク:法務省「戸籍法の一部を改正する法律について

六法先生
六法先生
(もっと早くに全国どこででも取得出来るようになっていても良さそうなもんだけど…まぁ、それが出来なかったのは、色々なシガラミもあるんだろうな)
誠実先生
誠実先生
不動産登記の場面(ex.住宅用家屋証明を取得する時)では、登記簿謄本を提出する代わりに、登記情報サービスを利用して、照会番号と発行年月日の記載のある登記情報を手続きに使用することができます。現在、戸籍謄本は本籍地のある役所か、現在戸籍であればコンビニで交付されます※が、登記情報と同じような扱いになれば、自宅でプリントアウトしたものを使うことができるので、今よりも手軽に手続きが出来ると思うのだけど、なかなかそうはならないね。

※各自治体によって取り扱いが異なります。

情報屋先生
情報屋先生
法人が不動産登記申請をする場合、以前は法人の資格証明書を提出しないといけなかったけど、今は会社法人番号を申請書に記載すれば資格証明書を提出しなくても良くなりましたね。ただ、不動産登記情報や法人登記情報は、請求すれば誰でも見れる情報であるのに対して、戸籍は個人情報の最たるものなので、個人情報保護の観点からも登記情報と同じ取り扱いにするのは難しいのかもしれませんね。
六法先生
六法先生
不動産登記では、昔は登記が完了すると登記済証(権利証)という紙媒体が権利取得の証明書となっていたけど、今は登記が完了すると登記識別情報という12桁の英数字情報に変わりましたね。手続きで戸籍謄本の提出が求められる場面でも、紙媒体である戸籍謄本そのものを提出する代わりに、戸籍に紐づけられた番号を提出してもOKとなると、今より手続きの煩雑さが軽減されるのかもしれませんね。
電卓先生
電卓先生
今は相続関係を把握しようと思うと、起点となる人の戸籍を取得して、そこから相続に関係のある人達の戸籍を順次取得して相続関係を洗い出していく作業をしていきます。戸籍情報がデータベースで一元管理されてデータが紐づけられていれば、特定の個人の相続関係を知りたいとなった時に、役所に請求すれば、その人の相続関係を自動的に割り出すことができそうですよね。それを相続関係一覧図として発行してくれれば、法定相続人を把握する負担が今より軽くなりますよね。
情報屋先生
情報屋先生
今は法定相続情報証明を法務局で発行されるようになったので、例えば被相続人名義の預金の解約手続きをする際に、法定相続情報証明を提出すれば、全ての戸籍を提出しなくても良いという取り扱いをする金融機関が増えました。ただ、法定相続証明情報を発行するにも、一旦すべての戸籍をこちらで集めて法務局に提出することになるので、戸籍を集めるコストは以前と変わらないのですよね。電卓先生のいうように、役所で相続関係一覧図を取得できるようになると、相続手続きに必要な書類の数も減って楽になりますね。
電卓先生
電卓先生
相続関係が役所で自動的に分かるようになれば、例えば相続を原因とする不動産の所有権移転登記申請をする時にも、戸籍をつけずとも被相続人の個人番号を提出すれば、法人が会社法人番号を提出するのと同様に、法務局側で照会してその人の相続関係が分かるようになりそうですね。
六法先生
六法先生
システムや理論的には出来そうだけど、法整備とか具体的な運用方法とか色々と決めることがあるだろうし、それを実現するにはいくつものハードルがあってなかなか進まないのかもしれないッスね。
電卓先生
電卓先生
江戸時代から続く過去の戸籍情報をデータ化して紐づけするのは難しいかもしれないけど、これから新たに作成する戸籍や変更する戸籍情報については、そういったことができそうな気がするのだけど。
誠実先生
誠実先生
できるかもしれないけど、「ハンコ文化」と同じように、昔から脈々と続く※今の戸籍制度そのものを変えるのは難しいのかもしれませんね。

※明治5年に制定された「壬申戸籍」の制度が現行戸籍の基礎とされています。それ以前にも江戸時代には「宗門人別改帳」「過去帳」「分限帳」といった戸籍に似た名簿のようなものがありました。

電卓先生
電卓先生
文化という意味では、今の戸籍制度は”家単位”であり”紙媒体”をもとに考えられた制度だと思うので、個人単位で考えることが多くなり、ICT技術も発展した今の時代には少し合わなくなってきているのかな?とも思います。韓国では戸籍制度が廃止されました。戸籍制度を根本から変えるにはドラスティックな改革が必要になりますが、今の戸籍制度が将来的には変わる可能性もありますね。

戸籍の保存期間と廃棄について

誠実先生
誠実先生
戸籍も住民票も、役所が保存する期間が決められていますね。相続手続きには遥か過去の戸籍や住民票のデータが必要になることもあるので、廃棄せずに保存しておけば良いと思うのだけど。
電卓先生
電卓先生
戸籍法の改正でも保存期間の撤廃はされませんでしたね。データ化しておけば、半永久的に保存できてもおかしくないと思いますが、なぜ廃棄するのでしょうね。ハードディスクの容量の問題かなw
六法先生
六法先生
管理の問題があるのかもね。廃棄せずに永久に情報を保存しておくと公言してしまうと、管理リスクが発生するもんね。
誠実先生
誠実先生
これから作成したり変更したりする戸籍に関しては、ただのテキストデータを保存していくだけだろうから、保存コストはかからなそうだけどね。保存期間を決めて廃棄するには、それなりの理由があるんだろうね。
情報屋先生
情報屋先生
相続手続きには、役所が廃棄してしまった書類の提出を求められることがあるよね。役所が廃棄したなら、役所が廃棄した書類の提出を求めるのはどうかと思うのだけどw。

所有者不明土地問題と戸籍の取得コスト

日本では今、土地の所有者が誰かが分からない、又は誰か分かっていても連絡が取れないために、土地の適正な管理がされずに管理不全となっている土地(=所有者不明土地)の解消に向けて、国が主導となって対策を進めています。

所有者不明土地が生まれる原因の一つとして、土地の相続登記が未了のまま長年にわたり放置されていたため、登記簿上の所有者から相続関係を辿って現在の所有者を判明させるのが困難であるといった現状があります。

誠実先生
誠実先生
土地の所有者が亡くなった後に相続登記をするには、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍等と相続人の戸籍を集めないといけませんね。戸籍を集める負担が大きいことが相続登記未了のまま放置される要因の一つとなって、所有者不明土地が生まれていると思うんだけど、どうだろう。
電卓先生
電卓先生
確かに戸籍を集める負担が減れば、今よりも相続登記がしやすくなるかもしれませんが、それだけでは所有者不明土地問題は解決しないように思いますね。相続登記が義務ではないという登記制度にも問題があると思います。
六法先生
六法先生
制度の問題もあるけど、田舎で所有者不明土地が生まれているのは、そもそもその土地を誰も相続したがらないといった点に問題があるんじゃないかな。登記制度や戸籍の取得コストを語る以前の問題であるような気がするよ。
電卓先生
電卓先生
そうですね。例えば土地を買いたいといったニーズが高い都会で、土地を買いたいけれどもその土地が所有者不明だったという場合には、買いたい人が土地の登記簿上の所有者から戸籍を辿って現在の所有者を割り出していくことになり、結果所有者不明土地の解決に繋がりますね。現在の所有者を割り出すためには膨大な数の戸籍を集めることになるので、戸籍を集める負担が軽くなると、現在の所有者を判明させるまでのコストも軽くなりますね。
六法先生
六法先生
田舎の場合はコストをかけてでも所有者を判明させたいといったニーズが低いから、所有者不明土地の解決になかなか繋がらないのかも。相続登記が義務化されれば、これからは田舎の誰も欲しくない土地でも誰かが相続することになって、相続登記がされていけば所有者不明土地が減ると思うな。

本籍地について

電卓先生
電卓先生
(2020年)現在は、戸籍は本籍地のある役所で発行されますが、そもそも本籍地というのは必要なんですかね?
情報屋先生
情報屋先生
本籍地は日本国内であれば自由にどこにでも決めることが出来ますね。本籍地は戸籍が管理されている市区町村を示す管理番号のようなもので、その管理場号を場所を基本とした本籍地という形にすることには、あまり意味がないように思いますね。
誠実先生
誠実先生
本籍地のある役所では、その人の住所履歴が記載された「戸籍の附票」というものを発行して貰えます。住所履歴を知りたい時に住民票で遡っていこうと思うと、住民票は住民登録されている役所で発行されるので、市区町村を超えて住所移転をしている時には、それぞれの役所に発行して貰うことになり大変手間がかかります。「戸籍の附票」を請求すると、それ一枚で住所履歴を知ることができる場合があるので便利です。
電卓先生
電卓先生
ただそれも、本籍地を基にした自治体単位で管理するという形ではなく、データを国で一元管理して、本籍地を”本籍番号”のようにして個人単位で情報を引き出せるようになれば、本籍”地”という場所単位で管理する必要はなくなりますよね。
誠実先生
誠実先生
国で一元管理するとデータの紐づけがされて便利にはなると思いますが、実際に処理するのは自治体ベースになるので、各自治体の処理能力や人員コストの整備などを整える必要がありますよね。
電卓先生
電卓先生
本籍地があることで、結果差別に繋がるといった現状もあります。制度やシステムが変わることによって、将来的に本籍地の在り方も変わるかもしれませんね。

今回は、戸籍制度についてそれぞれ思う事を話し合いました。

戸籍には、その人の出生から死亡までの婚姻関係や転籍履歴などが全て記載されています。相続登記をする際には、亡くなった人の戸籍を集めることになります。戸籍を見れば、その人の人生を垣間見ることが出来ます。

戸籍を手続きに必要な書類として見るだけではなく、戸籍を手にした時に、そこから浮かび上がる先祖の人間ドラマを想像しながら見ると、先祖が生きてきた時代があって今の自分に繋がっていることを再認識できる機会になるかもしれません。

 

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