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コラム・その他

[コラム]所有権放棄

コラム1所有権放棄

相談者
相談者
いらない土地の所有権を放棄したいのですが、なにか良い方法はないでしょうか?

先日、とある方からこんな相談をされました。

現状では、土地がいらなくなっても、登記簿上に所有者として記載されている人が、土地の所有権を勝手に手放し”放棄”することは出来ません。

いらなくなったからといって、生活ゴミのように、土地を捨てることはできないのです。

情報屋先生
情報屋先生
相談者のお話しはこんな感じでした。

所有権放棄1私はとある島で生まれました。父は、島で農業をしていました。

毎日仕事に精を出し、来る日も来る日も働いて、どんどんと農地を広げていきました。次第に米や野菜を収穫するだけでなく、鶏や牛を飼って、畜産業にも従事しました。

そんな父が、先日亡くなりました。私は結婚して島を出ていたのですが、母は高齢だっため、次の相続のことも考えて、遺産分割協議で父名義の土地を、私の名義に変更しました。

島は過疎化が進み、農地の借り手もおらず、次第に荒地になっていきました。

「木が倒れている」と島の人から連絡があれば、船賃を払って島に渡り、その処理をしています。毎年固定資産税も払っています。

私が元気で生きている間はまだ良いのですが、私が死んだ後に、子供たちがこの土地を相続して、子供たちにこういった負担がかかるのが申し訳なくて…。

父が頑張って広げていった土地を手放すのは忍びないのですが、できることなら今のうちに土地を手放して、土地の管理や固定資産税の支払いをやめたいのです…。


お話しを整理すると、土地を手放したい理由として、

  1. 土地の管理責任を子供に引き継がせたくない
  2. 土地の固定資産税の支払いを子供にさせたくない

というのが、大きな理由です。

相談者が亡くなった場合、(生きていれば夫と)子供が相続人となり、遺産を相続します。土地の所有権を相続したくない場合は、家庭裁判所に申述して相続放棄をするという方法があります。しかし、相続放棄は、被相続人の遺産を一切合切放棄する手続きなので、その土地だけを放棄することはできないのです。

仮に、子らが相続放棄をしたとしても、民法には、このような規定があります。

民法940条

相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

つまり、子らが相続放棄をしても、後順位の相続人(相談者の母や妹・弟)が相続財産の管理を始めるまでは、相続放棄をした相続人に、その土地の管理責任は残るということです。

今回の場合、母や妹・弟も、この土地はいらないと思っているので、子らと同じように相続放棄をするでしょう。そうすると、次の管理人が現れないので、管理責任は子らに残ってしまうことになります。

子らが管理責任から逃れるためには、母や妹・弟が相続放棄した後、家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらい、相続財産管理人にその土地の管理をしてもらうという方法があります。

しかし、家庭裁判所へ相続財産管理人の選任申立てをするには、家庭裁判所へ予納金を納付する必要があります。相続財産管理人の報酬や管理費用を、あらかじめ用意しないといけないのです。相続放棄をしても、お金が必要になるのです。

放棄された相続財産は、最終的には国庫に帰属します(民法959条)。しかし、国は、土地を処分して得た金銭等は引き取るけれども、活用の難しい土地そのものを引き取ることには消極的なようです。お金を用意して相続財産管理人を選任しても、その土地の処分には相当な時間がかかるでしょう。

情報屋先生
情報屋先生
相続放棄は全ての遺産を放棄する手続きです。今回の相談内容では、土地の所有権を手放すために、預貯金等の一切の財産を放棄するのは、そもそも現実的ではありません。
誠実先生
誠実先生
市に引き取って貰えないかな?

相談者も、引き取って貰えないか、市にかけあったようです。しかし、市が引き取ってくれるようなことはなかったようです。

誠実先生
誠実先生
最近は、そういった土地を専門に買い取る業者もいるようだよ。
電卓先生
電卓先生
近隣の方に、買い取って貰う手はないのかな?

島は高齢化・過疎化が進んでおり、そのような土地を買いたいという人はいないようです。島には同じような問題に直面している人が多く、土地を手放したいと思っている人が他にも沢山いるとのことです。

電卓先生
電卓先生
もし登記地目と現況が合っていないなら、現況に合わせた地目変更をしたら、固定資産税額が低くなるかもしれないよ。

それも考えたようで、土地家屋調査士に相談したそうです。現状では土地の境界線が曖昧のようで、測量をして境界確定が必要とのことです。島の土地で、かつ広大な土地なので、境界確定するには相当の費用がかかると言われたそうです。

固定資産税がいくらか安くなるのと、土地家屋調査士に支払う費用を天秤にかけた時に、地目変更をするまでのメリットがなさそうなので、今のところ地目変更することは保留しているそうです。

電卓先生
電卓先生
市に相談したら、登記簿の地目変更をせずとも、課税地目を変更して貰えたら、支払額が低くなるかもしれないよ。

土地を持ち続ける限り、土地の管理責任から逃れることは出来ません。しかし、市に相談することで、相談者のもう一つの心配である固定資産税の支払いは、その額を抑えることができるかもしれません。

六法先生
六法先生
いずれにしても、土地の管理責任は残ってしまうよな。今、所有権放棄ができるように国で検討されているみたいだけど、実現はいつになるだろうか。

現在法制審議会では「所有権放棄制度の創設」が検討されています。放棄するための具体的な要件や、放棄した後の管理問題等、所有権放棄制度が創設されるまでには、検討すべき事項が山積みです。

実現にはまだ時間がかかりそうですが、実現されると、こういった問題に悩まされている方が救われる制度になるかもしれません。

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