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相続・終活

旧民法時代、実際に使用されていた家督相続制度とは?〜現在も相続の時に考慮すべき理由〜[相続・終活の基礎知識]

相続終活25家督相続制度

誠実先生
誠実先生
一度は家督相続という言葉を聞いたことがあると思うのですが、実際どういうものなのかはあまり知られていません。大昔の法律の話になりますが、相続の手続きをする際、家督相続を理解しておかなければならない場合もあります。今回は「家督相続」について解説していきます。

家督相続を知っておくべき理由

家督相続は今から70年以上も前に廃止された法律です。今の相続に家督相続を使うことができません。

ですが、大昔に発生した相続の手続きを「今する」場合は、当時の法律に当てはめて考えなければならないのです。

例えば戦前に亡くなったひいおじいさんやひいひいおじいさんの名義のままになっている土地の名義変更する場合、家督相続がある時代の法律で考えなければならないのです。

実際に日本では、長年名義が変更されないで放置されている土地がとても増えており、所有者不明土地問題として社会問題となっています。現在進行中の問題で、まだまだ解決の目処が立っていません。

誠実先生
誠実先生
大昔の名義で放置された不動産を売却するためには、相続登記をする必要があります。長年放置されているため、「現在の所有者がわからない」「相続人が多すぎて処分できない」不動産が地方ではとても増えています。政府も最近になって問題視しており、法整備を急いでいます。

家督相続とは?

では本題の家督相続について解説していきましょう。

家督相続とは明治31年7月16日から昭和22年5月2日まで施行されていた民法で定められていた相続制度です。明治憲法から日本国憲法になって、憲法にそぐわない法律となったため、見直されて廃止されました。

戸主が亡くなった場合や隠居をした場合など、一人に戸主の地位や財産を相続させるため設けられた制度でした。

当時は『家』がとても重要視されており、戸主としての権限が非常に強かったため生前に相続をすることができました。

現在は相続人全員に平等に相続する権利があるのですが、当時はそうではありませんでした。

発展

戸主には家族の統率・監督するための権限が与えられていました。家族の結婚や養子縁組などの同意権や家族の居所指定権というのもありました。今では考えられないほど戸主には強い権限があったのです。

誠実先生
誠実先生
今の相続は財産だけに着目していますが、昔は「家」を守ることもとても大事なことでした。そのため、分家や廃家といった「家」について定めた条文もありました。

家督相続の開始原因

家督相続の開始原因には以下のようなものがあります。

  • 死亡
  • 隠居
  • 国籍喪失
  • 去家(※1)
  • 女戸主の入夫婚姻(※2)または入夫の離婚(※3)

※1 戸主が婚姻または養子縁組などで家を去った時
※2 女戸主である妻の家に夫が入る婚姻
※3 入夫婚姻した夫が離婚し、元の家に復籍する場合

先ほども書きましたが、家督相続は現在の相続のように亡くなった時だけに発生するわけではありませんでした。戸主権を譲り渡す必要もあったため、生前に家督相続するケースも少なくありませんでした。

発展

隠居は男女で取り扱いに差がありました。男性の場合は原則60歳を超えない限り隠居できませんでしたが、女性については年齢制限がありませんでした。

誠実先生
誠実先生
対象が戸主に限られており、男女にも取り扱いの差があるため、現在の相続と比べると非常に複雑な法律でした。司法書士試験では昔の法律を勉強しないので、実務の処理のために必死に勉強しました。

家督相続人の種類と順位

家督相続人の種類と家督相続人となる順位は以下の通りとなります。

  1. 第一種法定家督相続人
  2. 指定家督相続人
  3. 第一種選定家督相続人
  4. 第二種法定家督相続人
  5. 第二種選定家督相続人

現在の法律とはかなり異なる名称となっているので、これだけではイメージが持ちにくいと思いますので、一つずつ確認をしていきたいと思います。

第一順位 第一種法定家督相続人

相続が開始したときに被相続人の戸籍内にいる直系卑属(子、孫など)が第一順位の相続人となります。複数直系卑属(子、孫など)がいる場合は下記のように家督相続人となる人を定めていました。

また、法定家督相続人は相続放棄をすることができませんでした。

  • 親等(※1)の異なる者の間では被相続人に親等が近い者が優先
  • 親等が同じ場合は男性が優先
  • 親等、性別が同じ場合は嫡出子が優先
  • 親等が同じ間では男性の私生子(※2)よりも女性の嫡出子、庶子(※3)が優先する
  • 同じ順位のものは年長者が優先

※1 親族間の遠近を表す数字。子は1親等、孫は2親等のように数える。
※2 婚姻外の子で父が認知していない子
※3 婚姻外の子で父が認知した子

誠実先生
誠実先生
被相続人に子が複数いた場合は最年長の男性である長男が家督相続人となりました。男女や身分によっても順位が異なりました。

第二順位 指定家督相続人

法定推定家督相続人がいないときは、被相続人が家督相続人を指定することができました。指定する方法は生前に行うことも、遺言で行うこともできました。法定家督相続人とは違い、放棄することができました。

指定家督相続人を指定する場合は、相続の発生原因が死亡または隠居に限られていました。

第三順位 第一種選定家督相続人

第二順位の家督相続人がいないときは、同一戸籍内の父、父がいないまたは意思能力がなければ母が家督相続人となりました。

父母がいないときは、親族会が以下の順位に従って同一戸籍内にいる中から家督相続人を選定することとなっていました。選定順位は裁判所の許可を得ることで変更することが可能でした。

親族会とは当時の法律に定められていた合議体をいいます。裁判所によって選定され、召集されるもので、親族が寄り合って勝手に開催できるものではありませんでした。

  1. 家女(※)である配偶者
  2. 兄弟
  3. 姉妹
  4. 家女ではない配偶者
  5. 兄弟姉妹の直系卑属

※婚姻または婿養子縁組の際に養子からみて養家にいる女子

 

第四順位 第二種法定家督相続人

第三順位までの家督相続人がいないときは、直系尊属が家督相続人になるものとされていました。親等の最も近い男性から順に選ばれるルールとなっていました。

第五順位 第二種選定家督相続人

直系尊属も亡くなっている場合、親族会で被相続人の親族、家族、分家の戸主または本家もしくは分家の家族中より家督相続人を選定するものと定められていました。裁判所の許可があれば他人の選定も可能とされていたました。

発展

旧民法時代に家督相続が開始し家督相続人が選定されていない場合、新民法が適用されることとなります(民法附則25条2項)。あまり多くはないケースですが、全くないわけではありません。

誠実先生
誠実先生
親族が誰一人いなくなっても、法律で家の存続を守ろうとする価値観は今では全く亡くなってしまいましたね。良し悪しではなく、同じ国の法律がここまで大きく変化していることに驚きを隠せませんね。

戸主以外の相続は『遺産相続』

これまで解説しました、家督相続は戸主のための相続を定めた法律です。

戸主以外の相続については遺産相続という別の手段が適用されることとなります。戸主以外とは、隠居した元戸主も対象となりますので、隠居後に取得した財産については遺産相続が適用されます。

遺産相続については別途記事で詳しく解説します。

家督相続に関する司法書士と税理士の会話

誠実先生
誠実先生
家督相続は現在の法律に比べると非常に複雑です。子が家督相続人となる場合は非常に簡単なのですが、家を絶やさないよう例外措置に余念がないので、複雑になってしまっているのかもしれませんね。
電卓先生
電卓先生
家督相続は、戸主としての地位や戸主が所有する一家の財産を「単独相続」する点も特徴ですね。現在の個人単位での財産の承継というよりも、家および家としての財産を守り、承継していくことが重要視されていたと考えられますね。
情報屋先生
情報屋先生
相続実務をしていると、明治以前の古い戸籍謄本を集めないといけない場面があります。古い戸籍謄本は墨字で記載されていて、現在の戸籍謄本とは様式も記載内容も異なっています。また、発生原因が死亡以外にもある家督相続制度に基づいた内容で記載されているので、当時の法律を理解して読み解かないと、相続関係を正確に把握することが出来ませんね。
六法先生
六法先生
現在では相続人それぞれに相続権があるのが当たり前ですが、70年ほど前は全く異なっていましたね。実際に70年前というのはそれほど昔の事ではなく、現在でも長兄が全て相続するという考えの方はいらっしゃいます。相続人だけでは解決できない場面もありますので、そのような場合には専門家などの第三者を含めた遺産協議や、調停を用いることも考える必要がありますね。

 

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