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士業の議論・考察

[議論/考察]相続欠格・推定相続人の廃除・相続放棄

議論4:相続欠格・廃除・相続放棄

今回は、「相続欠格」「推定相続人の廃除」「相続放棄」について4人の現役司法書士・税理士がざっくばらんに話した内容をご紹介致します。

「相続欠格」について

相続欠格とは、本来であれば相続人になる人が犯罪を犯すことで、法律上当然に相続権を奪われることをいいます。

相続欠格者になるための要件は、以下になります。

  1. 故意被相続人や先順位・同順位の相続人殺人又は殺人しようしたために刑に処せられた人(民法891条1号)
  2. 告訴や告発する能力がある人が、被相続人が殺害されたことを知っていたにも関わらず、これを告発せず、又は告訴しなかった人(民法891条2号)
  3. 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた人(民法891条3号)
  4. 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた人(民法891条4号)
  5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した人(民法891条5号)
誠実先生
誠実先生
“相続欠格”という規定があることは司法書士であれば誰でも知っていますが、実務で相続欠格にあたることはそうそうないですね。
電卓先生
電卓先生
上記⓵の刑に処された人以外に当たる場合は、立証するのが難しそうですね。
六法先生
六法先生
相続欠格ではないと本人が言っている場合は、裁判所で訴訟をして、その人が相続欠格である旨の確定判決を得る必要がありますね。
誠実先生
誠実先生
推定相続人の中に相続欠格者がいる場合に法定相続分や遺産分割協議による相続登記をする場合は、相続欠格者の署名と実印による捺印がされた相続欠格者である旨が記載された証明書(相続欠格証明書)と、印鑑証明書を法務局に提出する必要がありますね。
電卓先生
電卓先生
特別受益がある場合に、特別受益証明書を提出するのと似ていますね。
六法先生
六法先生
裁判で相続欠格である旨の確定判決を得た時は、相続登記をする際には確定判決書の謄本と確定証明書を提出します。
誠実先生
誠実先生
相続欠格者が刑務所に在監している場合は、印鑑証明書を提出することが難しいですね。その場合は、相続欠格証明書に相続欠格者の拇印を押捺し、刑務所長に本人の拇印であることが間違いないことの旨が記載された証明書(奥書証明)を法務局へ提出します。
昭和39年2月27日民事甲第423号

刑務所在監者が登記義務者として印鑑証明書を提出できない場合には、本人の拇印である旨を刑務所長又は刑務支所長が奥書証明した委任状を添付すべきである。

情報屋先生
情報屋先生
相続欠格の要件に該当すると、法律上当然に相続人ではなくなりますが、相続欠格者になる要件はかなり限定的ですね。相続欠格以外に相続人から除外するには、被相続人の意思による”廃除”という方法もあります。

「推定相続人の廃除」について

推定相続人の廃除とは、遺留分を有する推定相続人、被相続人に対して虐待重大な侮辱をした又はその他の著しい非行があった時に、被相続人が、その推定相続人の相続権を剥奪することを言います(民法892条)。

誠実先生
誠実先生
推定相続人が廃除されると、廃除された旨がその人の戸籍に記載されますが、実務でその戸籍を見ることはあまりありませんね。
電卓先生
電卓先生
推定相続人を廃除するには、家庭裁判所へ廃除の申立をする必要があります。家庭裁判所が実際に廃除を認めた件数は、平成29年度の司法統計によると、申立て件数328件に対して43件と、約1割程度になっています。
誠実先生
誠実先生
年間43件だと、単純計算で1年に各都道府県に1人いるかいないかくらいの確率ですね。家庭裁判所では、廃除をするか否かをかなり慎重に検討しているようですね。
情報屋先生
情報屋先生
家庭裁判所への推定相続人の廃除の申立がされると、調停ではなく、初めから審判手続きがされますね。審判手続きでは、廃除の申立者と廃除される推定相続人が廃除原因の有無について主張・立証をし、最終的には家庭裁判所が廃除に値するかどうかを決定しますね。
誠実先生
誠実先生
遺言者の意思で相続人から除外するには、廃除ではなく、遺言書によって財産をその相続人以外へ遺贈するという方法がありますね。
電卓先生
電卓先生
廃除が認められるためには、被相続人に対する虐待重大な侮辱著しい非行があり、かつ裁判所の審判によらないといけないですね。廃除するには時間も手間もかかり、認められるかどうかも不明確なので、遺言書によって財産の渡し方を決めるのも、被相続人が相続財産の分け方を決める有効な手立てですね。
六法先生
六法先生
遺言書を書くことによって被相続人の意思が実現するなら、相続人から除外する手段としては、廃除の申立をするより遺言書を書く方が現実的かもしれませんね。子(第1順位の相続人)や親(第2順位の相続人)には遺留分があるので、財産を全く与えないようにするのは遺言書では難しいかもしれませんが。
誠実先生
誠実先生
推定相続人が廃除されると、廃除者は相続権を失いますが、その廃除者に子がいた場合は、その子が相続人となって相続財産を受け取る権利を得ますね(代襲相続)。
電卓先生
電卓先生
代襲相続のように直接の相続人になるわけではありませんが、被相続人が子ではなく孫に財産を残したい時には、遺言で孫に遺贈する意思を書くという方法もありますね。例えば、子が行方不明で孫が面倒をずっと見てきたという場合、行方不明というだけでは子を廃除する要件には当てはまらず、廃除して孫に代襲相続させるのは難しいですが、遺贈して孫に財産を残すことができますね。
六法先生
六法先生
子を廃除して孫が代襲相続したとしても、孫が受け取った被相続人の財産を、あとで子が取り上げてしまう可能性がなきにしもあらずだよな…。廃除をしたいと相談がきた場合は、相談者の話を良く聞いて、本当に廃除の申立をすることが最適解なのか、遺贈など他の方法で相談者の意思を実現できないか、よく検討して答えを出す必要がありますね。
誠実先生
誠実先生
家庭裁判所で廃除が認められた後でも、廃除された推定相続人が廃除後に改心した時など、被相続人が廃除者に廃除原因が無くなったと判断した場合は、被相続人は廃除の取消しを家庭裁判所へ申立てることが出来ますね。廃除が取消された後に、また虐待や著しい非行などの廃除原因が復活することもあるらしいですが…。

「相続放棄」について

相続放棄するか否かの熟慮期間

誠実先生
誠実先生
家庭裁判所への相続放棄の申述は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三か月以内にしないといけないですね。
六法先生
六法先生
被相続人と普段関わりがない人が相続人になる場合は、被相続人が死亡して随分時間が経ってから相続があったことを知ることも多いですね。そういった場合に家庭裁判所へ相続放棄の申述する時は、相続開始があったことを知った日が分かるもの(ex.他の相続人からの相続開始を知らせる手紙のコピーと、その手紙が入っていた消印のある封筒)を申述書と一緒に提出します。
情報屋先生
情報屋先生
役所から突然「あなたは叔父さんの相続人です。叔父さんが生前に所有していた土地の境界調査を○月○日にするので現地に来てください」という内容の手紙が届いて、自分が相続人であることをその時初めて知ったという事例があったな。
六法先生
六法先生
実務で相続放棄をする理由としては、被相続人と普段関わりのない場合に、相続に関わりたくないという理由が多いね。債務がどれだけあるか分からないし、縁の薄い相続人間で遺産分割協議をするのは手間も時間もかかりますもんね。
電卓先生
電卓先生
相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月の熟慮期間内に、単純承認又は限定承認又は相続放棄をするかを決められない場合には、家庭裁判所へ熟慮期間を伸長する申立てが出来ますね。
情報屋先生
情報屋先生
自分以外の相続人が相続放棄しているか否かは、家庭裁判所へ「相続放棄・限定承認の申述の受理の有無の照会」をかけて知ることができますね。熟慮期間の申立がされている場合は、照会書にその旨が記載された回答が返ってきます。
誠実先生
誠実先生
相続財産に多大な債務があった場合に、相続人間で協議して返済できる余地があるか、又は相続放棄をするべきか、相続関係が複雑になっていて、自分以外の相続人が確定していない場合にも、3カ月の熟慮期間内に相続放棄するか決め兼ねることがありますね。
六法先生
六法先生
3カ月の熟慮期間をかなり過ぎていた場合でも、熟慮期間の起算点を、債務が存在することを知った時に繰り下げた裁判例もあるよな。
電卓先生
電卓先生
余談ですが、相続税の申告は、相続開始から10カ月以内にする必要があります。申告後に新たな資産が発覚した場合は、遺産分割協議をやり直して、税務署に修正申告をします。
誠実先生
誠実先生
相続放棄は相続財産を処分すると出来なくなりますね。遺産分割協議によって積極的に被相続人名義の不動産を自分名義に変更した場合は処分行為に当たりますが、保存行為としてする法定相続による名義変更では相続放棄をする余地がありますね。

相続放棄の意味

六法先生
六法先生
「相続放棄」は、家庭裁判所へ申述して受理されることによって、法律上自分が相続人でなくなるようにする手続きのことだけど、一般の方の中には遺産分割協議によって遺産を受け継ぐことを放棄したことを相続放棄だと思っている方もいらっしゃいますね。
誠実先生
誠実先生
相続の相談を受けた時に、相談者から相続放棄という言葉が出た時は、それが家庭裁判所の手続きによる相続放棄なのか、遺産分割協議によって財産を放棄したことなのかをきちんとヒアリングする必要がありますね。
電卓先生
電卓先生
相談者が「相続放棄をした」とおっしゃった場合は、必ず「裁判所の手続きで相続放棄しましたか?」と聞いて確認するようにしています。相続放棄は一切の相続関係から除外されるので債務を相続することもありませんが、遺産分割協議でした相続放棄は債務を相続するので、ある日突然債権者からの返済督促がくるかもしれませんよね。
六法先生
六法先生
裁判所の手続きでした相続放棄と、遺産分割協議でした遺産放棄では、その人が相続人であるか否かという大きな違いがあるので、その後の相続手続きにも違いが出てきますもんね。相続放棄をした人は基本的には相続には関わりませんが、相続人が不動産の相続登記をする際に「相続放棄申述受理通知書(又は証明書)」を提出することがありますね。

未成年者の相続放棄手続き

六法先生
六法先生
未成年者が家庭裁判所へ相続放棄の申述をする場合は、基本的には法定代理人(父や母)がしますね。
電卓先生
電卓先生
ただ、法定代理人である父母と未成年者が利益相反の関係にあたる場合は、特別代理人を立てて相続放棄をする必要がありますね。利益相反になるかどうかは、当事者の意思は関係なく、外形的に判断されます。例えば、借金のある父が亡くなった場合、母が子に借金を背負わせたくないと思って子に相続放棄をさせたいと思った場合でも、母が子に代わって相続放棄の手続きをすることはできず、特別代理人を立ててする必要があります。
誠実先生
誠実先生
先に母が相続放棄をして相続人では無くなっていた時は、母は子に代わって相続放棄手続きをすることができますね。でもその場合でも、子が複数人いて、子全員について相続放棄をする時は母が出来ますが、子の一部のみについて相続放棄する時には特別代理人を立ててする必要があります。

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