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税金・特例/控除

配偶者居住権の評価方法(電卓先生の税金解説)

税金12:配偶者居住権の評価

電卓先生
電卓先生
相続税の計算における配偶者居住権の評価方法については、相続税法第23条の2で定められています。
今回はその具体的な評価方法について解説します。

配偶者居住権の評価方法

建物

配偶者居住権の計算の考え方

居住建物の相続税評価額×(残存耐用年数-存続年数)/残存耐用年数」で存続期間満了時点における建物所有権の価額を算定します。

これに「×存続年数に応じた法定利率による複利現価率」により現在価値に割り戻すことにより、相続開始時点における(配偶者居住権の負担付きの)建物所有権の評価額を算定します。

そして、この価額を配偶者居住権が設定されない場合の相続開始時点における建物所有権の評価額から控除することにより、間接的に配偶者居住権を評価する形となっています。

配偶者居住権に基づく敷地利用権についても同様の考え方となっています。

土地等

敷地利用権が小規模宅地等の特例の要件を満たすときは、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます

耐用年数について

残存耐用年数は「耐用年数-経過年数」となります。
耐用年数=法定耐用年数×1.5です。具体的には以下のようになります。

鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造 71年
れんが造、石造又はブロック造 57年
金属造(骨格材の肉厚4mm超) 51年
金属造(骨格材の肉厚3mm超~4mm以下) 41年
金属造(骨格材の肉厚3mm以下) 29年
木造、又は合成樹脂造 33年
木骨モルタル造 30年

存続年数について

配偶者居住権の存続年数が終身の場合は配偶者の平均余命年数遺産分割協議や遺言等で存続年数を定められた時はその年数(ただし配偶者の平均余命年数を上限)となります。

平均余命年数は厚生労働省の完全生命表による年数です。現在(2020年7月時点)の最新の完全生命表は第22回生命表で、85歳男性であれば平均余命6年など、男女別、年齢別に平均余命が公表されています。

なお、経過年数、存続年数は「配偶者居住権が設定された時」を起点として計算します。
「配偶者居住権が設定された時」は、以下の通りとなります。

遺産分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき遺産の分割が行われた時
配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき相続開始の時

法定利率による複利現価率について

現在(2020年7月時点)の民法の法定利率は3%ですので、3%の複利現価率となります。

複利現価率は下記のように算定できますが、10年であれば0.744など一覧となった複利表が公表されています。

発展

複利現価率とは?
将来の金額を一定の利回りで現在価値に割り引くための計算式で、将来の一定の金額が現在いくらになるかを算定する率です。

r:民法の法定利率
n:配偶者居住権の存続年数

具体的な計算事例

  • 建物の相続税評価額1,000万円(木造、築4年)、土地の相続税評価額5,000万円
  • 配偶者(妻、70歳)が配偶者居住権(終身)を取得し、子は建物及び土地の所有権を相続する場合

建物の耐用年数=33年(木造)
存続年数=20年(70歳女性の平均余命年数(厚生労働省・完全生命表より))
複利現価率=0.554(法定利率3%、存続年数20年)

配偶者居住権の評価
建物相続税評価額1,000万円-建物相続税評価額1,000万円×(残存耐用年数29年(=33年-4年)-存続年数20年)/残存耐用年数29年(=33年-4年)×複利現価率0.554=828万円

居住建物の所有権部分の評価
建物相続税評価額1,000万円-配偶者居住権評価額828万円=172万円

敷地利用権の評価
土地相続税評価額5,000万円-土地相続税評価額5,000万円×複利現価率0.554=2,230万円

土地の所有権部分の評価
土地相続税評価額5,000万円-敷地利用権評価額2,230万円=2,770万円

配偶者居住権設定後の税務

配偶者が死亡した場合

配偶者が死亡した場合には、民法の規定により配偶者居住権が消滅します。

この場合には民法の規定により予定通り配偶者居住権が消滅するものであり、配偶者から所有者に対して相続を原因として移転する財産はありません

したがって相続税の課税関係は生じません。また、配偶者居住権の存続期間が満了したときも同様に贈与税の課税関係は生じません。

解除、放棄等により配偶者居住権が消滅した場合

上記の配偶者の死亡や存続期間の満了とは異なり、予定より早期に所有者に使用収益する権利が移転したものと考えられることから、配偶者から贈与があったものとみなして所有者に対して贈与税が課税されるものと考えられます。

所有者が死亡した場合

配偶者が死亡する前に所有者が死亡した場合は、所有者の所有権部分が相続税の対象資産となります。

まだ配偶者居住権は存続していますので、配偶者居住権設定時と同様に所有権部分の評価を行い、相続財産とすることになると考えられます。

誠実先生
誠実先生
配偶者居住権が設定された場合、相続財産は所有権と居住権に分けて考えられるのですね。たしかに配偶者(居住権)は無償で終身で住む権利を得られる反面、所有者(所有権)は使用を制限されてしまいますからね。
電卓先生
電卓先生
配偶者居住権は二次相続時には消滅することにより相続財産とはならないため、二次相続時の相続税の節税になり得ます。ただし、小規模宅地の特例の適用状況によっては節税とならない場合もあります。また、配偶者居住権を設定した後に当該不動産を処分等する場合にはみなし贈与による贈与税が生じる可能性もあります。配偶者居住権の設定を行うときにはその後の状況も検討したうえで設定することが望まれます。
情報屋先生
情報屋先生
建物が古くて、築年数が法定耐用年数を超えている場合は、存続期間満了時点における建物所有権の価額(「居住建物の相続税評価額×(残存耐用年数-存続年数)/残存耐用年数」の部分)が0円となり、これに複利原価率をかけても0円のままなので建物の相続税評価額からマイナスするものがなく、建物の相続税評価額がそのまま配偶者居住権の評価額になりますね。
六法先生
六法先生
配偶者居住権は建物に対して成立する権利ですが、成立した結果その敷地部分でもある土地にも影響を及ぼします。その敷地はその使用に配偶者居住権による制限を受けるためです。したがって相続税評価上、土地についてもそのことを考慮して評価額を定める事になりますね。

 

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