相続人による遺産分割協議は、相続人全員で相続財産の分け方を話し合いによって行います。
協議の方法には、①相続財産をそのまま分ける「現物分割」、②相続財産を換価して金銭等を分ける「換価分割」、③特定の相続人が特定の相続財産を相続する代わりに他の相続人へ代償金を支払って分ける「代償分割」の3つの方法があることを前回ご紹介しました。
遺産分割協議がまとまると、協議の結果を「遺産分割協議書」という書面にします。
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遺産分割協議書の作成方法
遺産分割協議は、口頭でおこなうことで効力が発生しますので、必ずしも遺産分割協議書を作成する必要はありません。
しかし、被相続人名義の預貯金の解約手続きや、不動産の名義変更手続きには、遺産分割協議書の提出が求められます。相続人間で話し合った内容を記録として残すだけでなく、協議の内容を対外的に証明するために遺産分割協議書が必要になります。
遺産分割協議書の書式に決まった形はなく、手書きでもパソコンで作成した書面でも大丈夫です。ただし、対外的な証明に耐えうる形式はある程度フォーマット化されています。
一般的には、協議内容を記載した書面をパソコンで作成した上で、遺産分割協議が成立した日付を記載し、全ての相続人が署名、及び実印での捺印をします。また、遺産分割協議書が複数ページに渡る場合は、文書の一体性を証明するために契印をします。
また、全ての相続人が1通の遺産分割協議書に署名する必要はありません。同一内容の遺産分割協議書を相続人の数だけ作成し、それぞれの遺産分割協議書に1人づつ署名捺印をしたものを保管するといった方法もあります。
その場合は、文書の改ざんを防ぐために、遺産分割協議書に割印をしておくもあります。
遺産分割協議書の書式サンプル
ここからは、遺産分割協議書の書式サンプルをいくつかご紹介します。
①現物分割の書式サンプル
被相続人が誠実花子、相続財産が誠実花子名義の土地建物と銀行預金1口座、相続人が誠実太郎、誠実二郎の2人で、誠実太郎が不動産、誠実二郎が銀行預金1口座を相続する場合(現物分割)。
遺 産 分 割 協 議 書
被 相 続 人 誠 実 花 子
本 籍 大阪府○○市○○町○丁目○番○号
最 後 の 住 所 兵庫県○○市○○町○丁目○番○号
登記簿上の住所 奈良県○○市○○町○丁目○番○号
令和〇年〇月〇日 上記被相続人 誠 実 花 子 の死亡により相続が開始したので、同人の相続人において、その相続財産について分割協議を行った結果、次のとおり相続することに決定した。
一.相続人 誠実太郎 は次の財産を取得する。
所 在 ○○市〇〇町〇〇丁目
地 番 ○番○
地 目 宅地
地 積 ○○.○○㎡
所 在 ○○市〇〇町〇〇丁目○○番地○
家 屋 番 号 ○○番○○
種 類 居宅
構 造 木造瓦葺2階建
床 面 積 1階 ○○.○○㎡
2階 ○○.○○㎡
一.相続人 誠実二郎 は次の財産を取得する。
○○○銀行 ○○支店 普通預金
口 座 番 号 01234567
口座名義人 セイジツハナコ
残 高 〇〇〇〇〇〇円
一.本協議書に記載のない財産及び後日判明した財産については、相続人誠実太郎が取得する。
上記のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため本協議書を作成し、署名押印のうえ、各自1通づつ所持するものとする。
令和○年○月○日
住 所 大阪府△△市△△町△△丁△△番△△号
氏 名 誠 実 太 郎 実印
住 所 兵庫県××市××町××丁目××番××号
氏 名 誠 実 二 郎 実印
①タイトルを「遺産分割協議書」とし、冒頭に被相続人の「氏名」「本籍」「最後の住所」を記載し、被相続人が誰であるかを明確にします。相続財産に不動産がある場合は「登記簿上の住所」も記載します。
②相続人の「誰が」「どの財産」を取得したのかが分かるように分割協議の内容を記載します。不動産の表示は、登記事項証明書(登記簿謄本)の通りに正確に記載します。
③末尾に遺産分割協議が成立した日を記載し、相続人全員が署名と実印での押印をします。
②換価分割の書式サンプル
被相続人が誠実花子、相続財産が誠実花子名義の土地建物のみ、相続人が誠実太郎、誠実二郎の2人で、誠実太郎が不動産を取得して売却し、売却して得た金銭を2人で分ける場合(換価分割)。
遺 産 分 割 協 議 書
(被相続人の表示 省略)
令和〇年〇月〇日 上記被相続人 誠 実 花 子 の死亡により相続が開始したので、同人の相続人において、その相続財産について分割協議を行った結果、次のとおり相続することに決定した。
一.相続人 誠実太郎 は次の財産を取得する。
(不動産の表示 省略)
一.相続人 誠実太郎 は、上記不動産を売却によって換価し、換価によって得た金額から売却手続に係る費用を控除した金額を、相続人 誠実太郎2分の1、相続人 誠実二郎2分の1の割合で相続する。
(後記省略)
換価分割は、相続財産が一旦相続人に相続された後に、売却して分割する流れになります。換価分割したことが分かるように、分割協議の内容を明確に記載します。
※換価分割である旨が分からない遺産分割協議書では、分配した金銭等が何の理由で渡されたか分からず、贈与税がかかってしまう場合がありますが、代金の分配が相続財産の換価によるものだと分かれば、贈与税が問題になることはありません。
【照会要旨】遺産分割の調停により換価分割をすることになりました。ところで、換価の都合上、共同相続人のうち1人の名義に相続登記をしたうえで換価し、その後において、換価代金を分配することとしました。 この場合、贈与税の課税が問題になりますか。
【回答要旨】共同相続人のうちの1人の名義で相続登記をしたことが、単に換価のための便宜のものであり、その代金が、分割に関する調停の内容に従って実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはありません。(国税庁HP「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」より引用)
③代償分割の書式サンプル
被相続人が誠実花子、相続財産が誠実花子名義の土地建物のみ、相続人が誠実太郎、誠実二郎の2人で、誠実太郎が不動産を取得する代わりに、誠実二郎へ代償金を支払う場合(代償分割)。
遺 産 分 割 協 議 書
(被相続人の表示 省略)
令和〇年〇月〇日 上記被相続人 誠 実 花 子 の死亡により相続が開始したので、同人の相続人において、その相続財産について分割協議を行った結果、次のとおり相続することに決定した。
一.相続人 誠実太郎 は次の財産を取得する。
(不動産の表示 省略)
一.相続人 誠実太郎 は、上記不動産を取得する代償として、相続人 誠実二郎に対して金〇〇〇円を令和〇年〇月〇日までに支払うものとする。
(後記省略)
代償分割であることが分かるように「〇〇を取得する代償として、金〇〇円をいつまでに支払う」といった内容を記載します。
※換価分割と同様に、代償分割でも贈与税が問題とならないように、代償分割である旨を明確にしておく必要があります。
遺産分割協議書に関する司法書士と税理士の会話













