相続財産の引き継ぎ方には、①民法が定める相続人(=法定相続人)が、民法で決められた割合(=法定相続分)で遺産を受け継ぐ「法定相続」、②相続人全員が話し合って遺産を分ける「遺産分割協議による相続」、③遺言書に記載された内容で遺産を受け継ぐ「遺言による相続」があります。
①法定相続については、第1回目でご紹介しました。今回は、②遺産分割協議による相続についてご紹介します。
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遺産分割協議とは?相続人全員で相続財産を分ける方法
遺産分割協議とは、被相続人の相続財産を「誰が」「どれだけ」相続するかを決めるための話し合いのことを言います。方式に決まりはありませんが、遺産分割協議は相続人全員でする必要があります。相続人が1人でも欠けた遺産分割協議は無効になります。
遺産分割協議をする前提として、①遺言書の有無、②相続人の確定、③相続財産の把握が必要になります。
①遺言書によって、被相続人が遺産分割の方法を指定していたり、相続財産を特定の相続人や第三者へ遺贈するとしていた場合は、遺産分割協議自体が必要なくなる場合があります。遺産分割協議をする前に、まずは遺言書の存在の有無を確認する必要があります。
自筆証書遺言の場合は、相続人が遺言書を保管していそうな場所を探したり、遺言書を預けていそうな人を尋ねたりして遺言書の在処を探します。また、令和2年7月10日からは、「法務局における自筆証書遺言書保管制度」が開始しました。遺言者が法務局に遺言書を預けていた場合は、法務局への確認も必要になります。公正証書遺言の場合は、遺言書は公証役場に保管されていますので、公証役場で遺言書の有無を検索して貰います。
②次に、遺産分割協議は相続人全員でする必要があるため、相続人が誰なのかを確定しないといけません。例えば、夫・妻・子(長男)・子(次男)といった4人家族で夫が亡くなった場合、相続人は妻と子2人になります。しかし、亡夫に妻や子が知らない前妻との子がいた場合は、その前妻の子も相続人となります。また、子が相続放棄をしたり、廃除や相続欠格によって相続人ではなくなることもあります。相続人全員でしない遺産分割協議は無効となり、一度成立したと思っていても、やり直しになりますので、相続人が誰なのかを確定することは、遺産分割協議をする上でとても大切です。
③相続財産には、現金や預貯金、不動産、株といったように様々なものがあります。また、借金等のマイナスの財産があることもあります。遺産分割協議は、相続財産を把握した上で、誰がどのように相続するかを話し合うことになります。
ただし、遺産分割協議は、全ての相続財産について同時に話し合う必要はなく、例えば判明している不動産だけを協議して分割することも可能です。相続財産が多種多様で、相続財産の把握に時間がかかりそうな場合は、一部のものについて協議を行い、その他の相続財産については、別途協議するといった形をとることができます。
遺産分割の方法「現物分割」「換価分割」「代償分割」
遺産分割協議は法定相続分に捉われずに相続人間で自由に決めることができます。協議を行う場合には、相続人が①現物分割、②換価分割、③代償分割の3つの方法から相続財産の分け方を決めます。
①現物分割とは?相続財産をそのまま分ける方法
①現物分割とは、相続財産をそのまま分ける方法です。例えば、被相続人が亡夫、相続人が妻・子(長男)・子(次男)の3人、相続財産が「亡夫名義の自宅」「銀行預金」「株」であった場合、妻が自宅を、長男が銀行預金を、次男が株を相続するといった分け方です。
現物分割は、相続財産をそのまま分けるので、相続人全員が納得していれば比較的スムーズに協議が進むことが多いです。例えば、妻は自宅にこれからも住み続けたいから自宅を、長男は結婚を控えていて結婚資金が必要だから銀行預金を、次男は株の運用に長けているから株を相続するといったように、それぞれの利益が被らない範囲で相続財産を分ける場合には現物分割を採用するといいでしょう。
また現物分割では、自宅の評価が1000万円、銀行預金残高が4000万円、株の時価評価額が1000万円であった場合、妻が自宅と銀行預金1000万円、長男が銀行預金2000万円、次男が株と銀行預金1000万円を相続するといったように、相続人間で不公平が起こらないように調整することも可能です。
ただし現物分割では、自分が相続する財産に納得できず、協議が進まない場合もあります。例えば被相続人が亡父、相続財産が亡父名義の自宅のみ、相続人が子(長男:結婚して自宅を出ている)・子(次男:自宅に住んでいる)であった場合、次男だけが自宅を相続し、長男は何も相続するものが無いといった場合です。こういった場合には、不動産を長男と次男の共有名義で相続する方法もありますが、次に紹介する「換価分割」「代償分割」をすることが考えられます。
②換価分割とは?相続財産をお金に換えて分ける方法
換価分割とは、相続財産を一旦お金に換えて、お金を相続人間で分ける方法です。例えば、相続財産が被相続人名義の不動産のみであった場合、その不動産を売却して得た代金を、相続人で分けるといったやり方です。
換価分割では現金を分けることになりますので、分割がしやすく、相続人間で不公平がおこりにくくなります。ただし、相続財産を売却するのに時間や手間・費用がかかったり、想定していた金額で売却できなかったりする可能性もあります。
③代償分割とは?
代償分割とは、特定の相続人が、特定の相続財産を相続する代わりに、他の相続人に対して相応の金銭等を支払って分割する方法です。
例えば被相続人が亡父、相続財産が亡父名義の自宅(評価額1000万円)のみ、相続人が子(長男)・子(次男)であった場合、長男が自宅を相続し、その代わりに長男が次男に対して現金500万円を支払うといった方法です。
代償分割では、相続財産を特定の相続人がそのままの形で相続できるメリットがありますが、代償金を支払う負担があったり、代償金を払うと約束したのに支払われなかった場合に揉め事に発展するもとになったりするといったデメリットもあります。
協議がまとまらなかったら?家庭裁判所による遺産分割調停と遺産分割審判
相続人による遺産分割協議は、相続人全員が”納得できれば”成立しますが、自由度が高い分、納得できずに協議がまとまらないこともあります。
そういった場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることが出来ます。調停では、家庭裁判所の手続きによって、相続人の言い分を聞いたり、相続に関する資料を確認した上で、裁判所(調停委員)から相続人へ解決案を提示したり、裁判所(調停委員)を通して話し合いを促したりしながら、遺産分割の方法を決めていきます。
調停で遺産分割の方法がまとまった場合には、調停調書が作成され、遺産分割協議は終了となります。話し合いがまとまらず調停が不成立になった場合は、自動的に審判手続きが開始されます。審判では、裁判官が一切の事情を考慮して遺産分割の方法を決定します。
尚、遺産分割調停を申し立てずに、初めから遺産分割審判を申立てることも出来ますが、審判を申し立てても調停で話しあう余地があると判断されれば、調停に付されることになります。
遺産分割協議に関する司法書士と税理士の会話













