今回は相続税の基礎ということで相続税の計算方法を中心に解説します。
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自分は相続税がかかるの?
相続税は、相続または遺贈により財産を受け継いだときに、受け継ぐ財産が一定以上の場合にかかる税金です。
一番のポイントは遺産総額が基礎控除を超えているかどうかです。
基礎控除を下回っていれば相続税はかかりませんし、相続税の申告の必要もありません。
基礎控除とは?
基礎控除=3,000万円+(法定相続人の数×600万円)
法定相続人の数は、相続放棄したものがいても相続放棄がなかったものとして算定します。
一見、相続放棄しても基礎控除が減らないので納税者に優しいように思いますが、次の場合はどうでしょう?
被相続人 A(配偶者及び子なし)
相続人 Aの母
なお、Aには兄弟が5人います。
→Aの母が相続放棄した場合、相続人はAの兄弟5人になりますが、この場合でも基礎控除は3,600万円(3,000万円+1人×600万円)のままです。6,000万円(3,000万円+5人×600万円)にはなりません。
養子がいる場合
被相続人に実子ありの場合は1人まで算入できます。
被相続人に実子なしの場合は2人まで算入できます。
仮に養子が3人いても法定相続人の数に算入できるのは1人または2人までです。
このような制限があるのは養子を増やして基礎控除を大きくし相続税逃れを防ぐためです。
誰が申告するの?
相続により財産を取得した人や遺言により財産を取得した人(受遺者)が申告する必要があります。
申告期限:いつまでに申告すればいいの?
相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。
申告書提出先:どこに申告書を提出するの?
被相続人の死亡時の住所地を所管する税務署に提出します。
では、ここから相続税の計算方法を解説します。
相続税の計算方法
長くなるので下線部分はそれぞれ後ほど解説します。
まず、財産を取得した人ごとに、課税価格を計算します。
相続又は遺贈により取得した財産+みなし相続財産+相続時精算課税に係る贈与財産-非課税財産-債務・葬式費用=純財産価額
純財産価額+相続開始前3年以内の贈与財産=各人の課税価格
次に各人の課税価格を合計して、課税価格の合計額を計算します。そして、課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いて、課税される遺産の総額を計算します。
各相続人の課税価格の合計 = 課税価格の合計額
課税価格の合計額 - 基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)= 課税遺産総額
課税遺産総額を、各法定相続人が民法に定める法定相続分に従って取得したものとして、各法定相続人の取得金額を計算します。
課税遺産総額 × 各法定相続人の法定相続分 = 法定相続分に応ずる各法定相続人の取得金額
各法定相続人ごとの取得金額に税率を乗じて相続税の総額の基となる税額を算出し、各法定相続人の算出税額を合計して相続税の総額を計算します。
法定相続分に応ずる各法定相続人の取得金額 × 税率 = 算出税額
各法定相続人ごとの算出税額の合計=相続税の総額
相続税の総額を、財産を取得した人の課税価格に応じて割り振って、財産を取得した人ごとの税額を計算します。
相続税の総額 × 各人の課税価格 ÷ 課税価格の合計額 = 各相続人等の税額
各相続人等の税額から各種の税額控除額を差し引いた残りの額が各人の納付税額になります。
簡単な例で具体的な計算の仕組みを見てみましょう。
相続人は長男と次男の2人、相続財産は1億円(葬式費用等控除後)、みなし相続財産などはないものとします。
例1:長男5,000万円、次男5,000万円で遺産分割した場合
課税価格の合計額=1億円
課税遺産総額=1億円-基礎控除4,200万円(3,000万円+600万円×2)=5,800万円
法定相続分に応ずる各法定相続人の取得金額=長男、次男とも2,900万円(5,800万円×1/2)
相続税の総額=(2,900万円×15%-50万円)+(2,900万円×15%-50万円)=770万円
長男が納付すべき相続税額=770万円×5,000万円÷1億円=385万円
次男が納付すべき相続税額=770万円×5,000万円÷1億円=385万円
例2:長男8,000万円、次男2,000万円で遺産分割した場合
相続税の総額を計算するところまでは例1と同じです。
相続税の総額=(2,900万円×15%-50万円)+(2,900万円×15%-50万円)=770万円
長男が納付すべき相続税額=770万円×8,000万円÷1億円=616万円
次男が納付すべき相続税額=770万円×2,000万円÷1億円=154万円
相続税額の2割加算について
財産を取得した人が被相続人の配偶者、父母、子供以外の者である場合、税額控除を差し引く前の相続税額にその20%相当額を加算した後、税額控除額を差し引きます。
子供が被相続人の死亡以前に死亡しているときの孫(=代襲相続人の場合)については、相続税額にその20%相当額を加算する必要はありません。
被相続人の養子は、一親等の法定血族であることから、相続税額の2割加算の対象とはなりません。ただし、被相続人の養子となっている被相続人の孫(いわゆる孫養子)は、被相続人の子が相続開始前に死亡したことによりその孫が代襲して相続人となっているときを除き、相続税額の2割加算の対象になります。
税額控除について
別記事にて解説します。
相続又は遺贈により取得した財産とは?
「相続財産について」で解説した経済的価値のあるすべてのものです。
相続財産は原則として時価により評価することになりますが、預金などの金額がわかりやすいものから不動産のように時価が明確でないものもあります。納税者の公平を保つために不動産などは評価基準が定められており、それによって評価する必要があります。財産の評価については別途解説します。
みなし相続財産とは?
生命保険契約による死亡保険金や死亡退職金です。これらは受取人固有の財産ですが、みなし相続財産として加算されます。
死亡保険金
保険料負担者、被保険者ともに被相続人である保険契約にかかる生命保険金です。
500万円×法定相続人の数までは非課税です。
死亡退職金
500万円×法定相続人の数までは非課税です。
基礎控除と同様、法定相続人の数は、相続放棄したものがいても相続放棄がなかったものとして算定します。養子がいる場合も同様です。
相続時精算課税に係る贈与財産とは?
また別途解説する予定ですが、相続時精算課税を適用していた場合はその名のとおり相続時に精算する必要があるため加算します。
非課税財産とは?
墓地、仏壇、祭具などがこれにあたります。
また、みなし相続財産で記載した非課税額(500万円×法定相続人の数)も非課税財産です。
債務・葬式費用とは?
債務は「相続財産について」で解説したいわゆるマイナスの財産です。
葬式費用は債務ではありませんが、遺産総額から差し引くことができます。
葬式費用について
葬式費用となるもの
- 葬式や葬送に際し、又はこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用
- 遺体や遺骨の回送にかかった費用
- 葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(例えば、お通夜などにかかった費用がこれにあたります。)
- 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
- 死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用
葬式費用に含まれないもの
- 香典返しのためにかかった費用
- 墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
- 初七日や法事などのためにかかった費用
相続開始前3年以内の贈与財産とは?
相続や遺贈で財産を取得した人が、被相続人の死亡前3年以内に被相続人から財産の贈与を受けている場合は、贈与時の価額を加算します。贈与が贈与税の基礎控除以下であっても加算する必要があります。贈与時に贈与税を納付しているときは贈与税額控除で控除できます。
相続税の税率
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
| 1,000万円以下 | 10% | 0円 |
| 1,000万円超3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
これを見てわかるように、相続税は累進課税になっています。
したがって相続財産が多ければ多いほど税負担は重くなります。逆に考えると、財産が多い人ほど相続税対策をする効果が大きくなります。













