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士業の議論・考察

[議論/考察]自筆証書遺言と法務局における保管制度について(改正法)

議論3:法務局における自筆証書遺言書保管制度

今回は「自筆証書遺言」と「法務局における自筆証書遺言書保管制度」について、4人の司法書士・税理士でざっくばらんに話した内容をご紹介します。是非ご一読ください。

自筆証書遺言作成と保管について

誠実先生
誠実先生
事務所に遺言書を作成したいという相談が来た時は、多くの場合は公正証書遺言を勧めるのだけど、自筆証書遺言を勧める場面にはどういった時があるかな?
六法先生
六法先生
自筆証書遺言は、公正証書遺言を作成するよりも安価で作成できますね。公証役場や証人にかかる費用がいらないので。あとは自筆証書遺言には後で書き直しがしやすいといったメリットも。出来るだけ安く遺言書を作成したいといった相談者様には、公正証書遺言と自筆証書遺言のそれぞれのメリット・デメリットをお伝えした上で、最終的には相談者にどちらの遺言書にするかを決めて頂いています。
誠実先生
誠実先生
実際に自筆証書遺言の作成に関与したことはある?
六法先生
六法先生
あるよ。数はそこまで多くないけど。今は令和2年7月10日に始まる「法務局における自筆証書遺言書保管制度(以下、保管制度)」の利用を見据えて、自筆証書遺言書作成のサポートをしているところ。保管制度は、自筆証書遺言のデメリットとされていたところが、かなりの割合で解消されていますね。ただ相談者が「あとで相続人同士でモメそうだな」という不安を抱えている時は、自筆証書遺言よりも公正証書遺言を勧めるかな。
電卓先生
電卓先生
トラブルを防ぐ意味合いの遺言書ではなく、終活の一環としての(最後のお手紙的な)遺言書だと、自筆証書遺言書でも問題はないかもしれないですね。
情報屋先生
情報屋先生
保管制度は、法務局が自筆証書遺言を預かってくれるので、他人に変造・偽造・破棄されたり、遺言書をなくしたりする恐れがなくなりますね。弁護士事務所では事務所で自筆証書遺言を預かることもあるようだけど、司法書士事務所でも預かることはある?
六法先生
六法先生
うちはあるよ。
電卓先生
電卓先生
そうなんですね。弁護士や税理士だと、顧問契約を結んでいる個人とは継続的にお付き合いがあるから遺言書を預かるのは分かるんだけど、司法書士は、お客様とはスポット的な関わりをすることが多いから、遺言書を預かることはあまりないのかな?と思っていた。
情報屋先生
情報屋先生
遺言者との関係を継続させるには、遺言書を預かる時に見守り契約等と一緒に受任する必要があるかもね。
誠実先生
誠実先生
遺言者が亡くなった場合にすぐに連絡を取り合えるように、遺言者の推定相続人と繋がりを持っておくというのも大切かも。

自筆証書遺言の検認手続と内容・真実性について

誠実先生
誠実先生
自筆証書遺言を相続手続きに使用する場合は、家庭裁判所による検認手続が必要だね(※)。

※保管制度を利用した場合は、検認手続は不要です。

電卓先生
電卓先生
検認は「相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせること」と「遺言書の内容を明確にし、その後の偽造・変造を防止すること」を目的とした手続だね。つまり検認は、相続人へのお知らせと遺言書の証拠保全手続き的役割なので、遺言書の内容の有効/無効を判断する手続ではないよね。
情報屋先生
情報屋先生
そうだね。遺言書の効力は「遺言無効確認請求訴訟」で争いますね。最近だと、紀州のドンファンの「遺言無効確認請求訴訟」がテレビやネットで話題になりましたね。
誠実先生
誠実先生
検認で遺言書の有効性について裁判所のお墨付が得られたわけではないけど、検認済であれば、自筆証書遺言でも登記手続きや金融機関の預貯金の名義変更の手続に使えるようになるね。もし手続をした後で「遺言無効確認請求訴訟」で遺言書の効力が覆った場合は、手続をやり直さないといけないね。
情報屋先生
情報屋先生
自筆証書遺言は「本当に本人の意思で書かれたものなのか」「本人の筆跡なのか」といった、遺言の真実性について争われる余地が公正証書遺言に比べて多そうですね。
誠実先生
誠実先生
自筆証書遺言の内容に沿って、不動産の登記手続きをしようとしたけど、物件の表示が登記簿記載の表示と違っていたこともあったなぁ。
情報屋先生
情報屋先生
自筆証書遺言では物件の表示に誤りがあることが結構あるよね。そういった時は、この遺言書で登記手続きが出来るか、法務局に事前相談するようにしている。
電卓先生
電卓先生
自筆証書遺言に記載されている内容(物件の表示)が必ずしも正しいものばかりではないので、登記手続きに使用する場合には細心のチェックが必要ですね。
誠実先生
誠実先生
遺言に記載されている内容に不備があると、遺言執行が出来なかったり、記載されていない財産について相続人で争いがおこる場合もあるよね。資産が沢山ある場合は、資産の把握や相続のさせ方について特に慎重になる必要があるね。
電卓先生
電卓先生
預貯金以外にも、「賃貸人の立場」といったような「契約上の地位」も相続財産の対象となりますよね。遺言者名義の不動産を誰かに賃貸して収益を得ている場合には、遺言者には「不動産の所有者」「賃貸人」「敷金返還義務者」といったような複数の立場があります。遺言書には、それぞれどう相続させるかにも言及しておくと、相続人間でのモメゴトの火種を事前に決しておくことができるかもしれませんね。
誠実先生
誠実先生
遺言書を作成することは、遺族への負担を軽減させたり、争いゴトが起こらないようにするなどの、予防法務の側面もあるよね。
六法先生
六法先生
遺言書を作成したからといって、全ての遺産”族”が亡くなるわけではないけど、司法書士が遺言書作成に関与する場合には、争いが起こらないように様々な角度から検討した上でサポートやアドバイスをしないとね。
電卓先生
電卓先生
司法書士事務所に遺言書作成の相談にこられる方の中には、相続関係がややこしかったり、財産が複雑だったり、相続時に何らかの問題が起こるかもしれないから、その対策をしておきたいといった方も多くいらっしゃいますね。自筆証書遺言を作成するにせよ、公正証書遺言を作成するにせよ、事前に相続対策をしておくことは大事ですね。

保管制度のメリット・デメリット・手続について

情報屋先生
情報屋先生
遺言者が法務局に自筆証書遺言を預ける際には、必ず本人が窓口にいかないといけないよね。施設に入っていたり病院に入院していて外出できない人は、保管制度を利用するのは難しいかな。
六法先生
六法先生
公正証書遺言だと、公証人の先生が施設や病院に出向いて作成してくれますね。外出できない人は保管制度を利用しない自筆証書遺言を作成するか、公正証書遺言を作成することになるね。
誠実先生
誠実先生
本人がいかないといけないのはデメリットになるかもしれないけど、法務局における自筆証書遺言書の保管制度を利用すると、検認手続きが不要になるのはメリットですよね。
六法先生
六法先生
家庭裁判所への検認手続申立てするには必要書類を集めなくてはいけないし、検認期日までに時間もかかるので、相続人等に結構な手間がかかりますね。検認手続きが不要になるのは、保管制度を利用する結構なメリットだな。
誠実先生
誠実先生
家庭裁判所へ検認手続を申立てると、相続人へ通知がいきますね。例えば、遺言者の遺志で、相続人に相続手続きの手間を取らせないために、生前お世話になった相続人へ全財産を包括遺贈する旨を遺言内容としていても、生前に全く関わりのなかった相続人へも通知がいくことになります。
電卓先生
電卓先生
公正証書遺言だと、検認手続きは不要なので、検認時に縁の薄い相続人へ通知がいくようなことはありませんね。
情報屋先生
情報屋先生
ただ、保管制度を利用しても、相続発生後に相続人が法務局から「遺言書情報証明書」の交付を受けたり、法務局でモニターによる遺言書の閲覧をすると、請求人以外の相続人等へ、それらがされたことの通知がいきますね。
六法先生
六法先生
「遺言書情報証明書」の交付請求をする際に、添付書類として法定相続情報一覧図の写し(住所の記載があるもの)等を提出しますね。法務局はそれをもとに相続人が誰かを把握して通知を送るわけだ。
電卓先生
電卓先生
「遺言書情報証明書」の交付請求者に受遺者も入っているけど、相続人ではない第三者である受遺者が法定相続情報一覧図の写し(住所の記載があるもの)を提出出来るのかな?「遺言書情報証明書」の交付請求をするために、相続人の戸籍を集める権限があるのだろうか?
情報屋先生
情報屋先生
受遺者兼遺言執行者でないと、被相続人や相続人の戸籍を集めるのは無理そうですよね。遺言書の内容が明らかになっていない段階で、第三者である受遺者が戸籍を請求したとして、役所は戸籍を発行してくれるのかな。
電卓先生
電卓先生
司法書士が保管制度の利用を前提とした自筆証書遺言の作成に関与する際には、遺言執行者についても検討した上で作成しないといけませんね。
六法先生
六法先生
検認された時には受遺者がいると、第三者である受遺者にも検認された旨の通知がいきますね。法務局に預けられた自筆証書遺言に第三者である受遺者がいる場合は、相続人等が「遺言書情報証明書」の交付をした際には、その受遺者にも通知ががいくようですね。
誠実先生
誠実先生
遺言者が自筆証書遺言を法務局に預ける際には、形式チェックがされますが、このチェックには、日付・氏名・全文の自書・押印以外に、遺言執行者や受遺者の記載もチェックされるようですね。
六法先生
六法先生
そうですね。そうでないと、受遺者や遺言執行者が誰なのかが分からないから、「遺言書保管事実証明書」や「遺言書情報証明書」の交付請求ができないよね。「遺言書情報証明書」には、「遺言者の氏名、出生の年月日、住所、本籍又は国籍、作成年月日、保管を開始した年月日、遺言書保管所の名称、保管番号、受遺者等、遺言執行者等」が記載されることからも、受遺者と遺言執行者がチェックされることが分かりますね。
情報屋先生
情報屋先生
請求人が受遺者や遺言執行者である場合は、請求人の住民票の写しが添付書面になっているので、それで請求人の本人確認がされるようですね。
誠実先生
誠実先生
相続による不動産の名義変更の登記手続きの依頼を受けた時は、現状では公正役場に遺言書があるか否かの調査を受けることもありますね。今後は法務局に自筆証書遺言が預けられているかの調査も合わせて受任する必要があるかもしれませんね。

 

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