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士業の議論・考察

[議論/考察]ハンコ文化(署名・実印・電子署名のメリット・デメリット)について:今後のハンコの行方。

議論考察1ハンコ文化

誠実先生
誠実先生
司法書士とハンコとのつながりは深いですよね。今日はハンコ文化について話しましょう。
用語解説
  • 印鑑…市区町村の役所や金融機関等に登録している印影のこと
  • 印影…はんこを紙に押したハンコの跡のこと
  • 実印…住民票を置いている市区町村の役所に登録された印鑑(ハンコ)のこと
  • 認印…市区町村の役所や金融機関等に登録していないハンコのこと
  • 署名…自筆した氏名、サインのこと

署名、ハンコ、電子署名のメリット・デメリット

誠実先生
誠実先生
不動産の決済をする場面では、お客様に「実印」と「印鑑証明書」をご用意して頂きますが、ご用意頂いたハンコが実印ではく認印だった場合がたまにありました。ご本人は実印と思ってご持参いただいたけど認印だった場合や、そもそも印鑑登録をしていなかった場合など。お店で購入したハンコが実印だと思っている方もいらっしゃいます。

不動産の決済の場面では、ほぼほぼ実印が必要になりますが、そもそもハンコを使用することが、今の時代に合わなくなっているのではないかと感じています。

※不動産の決済とは、売買契約に基づいて不動産の購入代金を買主が売主へ支払い、不動産の所有権を売主から買主へ移転する手続のことをいいます。多くの場合、決済は売主・買主・仲介業者・司法書士が一同に会して行われます。

電卓先生
電卓先生
そうですね、将来的には電子署名化が進むでしょうね。本人の意思を確認したり、文書が正式であるものを証明する手段には、「署名」「(紙に押す)ハンコ」「電子署名(≒電子化された実印)」の3つがあります

署名(自筆した氏名、サイン)について

電卓先生
電卓先生
署名(サイン)」は証拠能力が極めて高いものだと思いますが、決済の現場で署名をして貰おうと思うと、ご本人がその場に必ず居合わせないといけないという制約がありますね。あと、署名が本人がしたものであることは、厳密には筆跡鑑定等をしないと証明することは難しいですよね。

署名文化である外国では、重要な契約をする場面では公証人等の第三者が立会のもと、その署名が本人のものであることを証明しないと証拠能力がないとされているところもあります。署名とハンコを比較した時に、結構ハンコって便利なのかな?と思うところもあります。

電子署名について

電卓先生
電卓先生
電子署名」は、文書の改ざんを防いだり、業務の効率化を図るには良いと思いますが、時間的な制約が生じる場合もありますね。実務では、例えば提出日が決まっている何かの書類を準備する時、文書の日付欄を提出日にしておき、その文書に事前にお客様にハンコを押して頂き、提出日には文書を提出するだけにしておくといったことがあります。電子署名は署名した時刻がタイムスタンプとして残るので、こういったことは出来なくなるかもしれません。あとは、電子署名だと代印を第三者に委任するといったことが難しいような気がします。
六法先生
六法先生
そうッスね、今の決済の流れのまま電子署名が主流になると、必ず本人の立会が必要になるッスね。電子化によっていろいろな縛りを減らしたいのに、逆に色々な縛りが生まれるッスね。
誠実先生
誠実先生
そうだね。でも電子署名の普及に伴って、決済の流れも変わりそうだよね。今は決済の場で文書にハンコで押印することが多いけど、事前に電子署名した文書を用意するといったことが当然になるかもしれないね。皆で集まって決済をするといったことがなくなるかも。
電卓先生
電卓先生
そもそも皆で集まって決済をする意味って何でしょうね。
誠実先生
誠実先生
売買代金の授受や、銀行への書類提出、司法書士がする本人確認の場としての要素が大きいかな。電子決済や電子署名が一般的になると、決まった時間に決まった場所で集まる必要性が薄れてきそうですね。

※司法書士が業務の依頼を受ける際は、その人が本人であることの「人の確認」、依頼内容が何であるか「モノの確認」、依頼内容が本人の意思であることの「意思の確認」をしなければいけません。「人・モノ・意思」の確認は、司法書士がする最も重要な職務の一つです。

六法先生
六法先生
そうッスね。司法書士の本人確認は、例えば金融機関で融資を受ける場合は、決済の前に金銭消費貸借契約をするので、その契約の場で確認できるッスもんね。

※金銭消費貸借契約とは、借主(ex.住宅購入者)が貸主(ex.銀行)から金銭を借り入れて消費し、返済期日(返済期限まで)に借り入れた金額を貸主に返済する契約のことです。利息がある場合は、利息も返済期日までに返済します。金銭消費貸借契約を略して”金消契約”と呼ぶこともあります。

ハンコ・実印について

電卓先生
電卓先生
ハンコには、代理決済がしやすいといったメリットがありますね。本人が立ち会わなくても、信頼のおける第三者に委任してハンコを預けて決済をおこなうことも可能です。署名だと、代理決済するのはなかなか難しいですね。あと捨印を頂く場合にもハンコは便利ですね。
捨印とは?

捨印とは、文書に軽微な誤りがあった場合に、相手方で修正しても大丈夫という「訂正印」を、文書の余白に押印しておくこと

情報屋先生
情報屋先生
司法書士は本人に実印を頂く場面が多いけど、税理士の業務では実印を求める場面は結構ありますか?
電卓先生
電卓先生
税理士の業務では文書に実印を貰うことはあまりないですね。相続税の申告をする際の遺産分割協議書には実印を押して貰いますが、その他はほぼ認印です。
情報屋先生
情報屋先生
司法書士が法務局に登記申請した後、もし文書に誤りがあった場合は、その文書を訂正して法務局に提出し直す必要がある(これを補正という)けど、税理士の業務ではそういったことはないですか?
電卓先生
電卓先生
税務申告の場合は、申告書に誤りがあった場合は、新たに申告書を作って作成し直したものを再度提出するので、一度作ったものを修正して提出するといったことはないですね。同じ紙(文書)をバージョンアップさせていくイメージではないので、訂正印や捨印があることが重要にはならないかもです。
誠実先生
誠実先生
司法書士の業務ではご本人に実印を求めることがかなりありますが、税理士の業務では認印を求めるの方が多いのですね。
情報屋先生
情報屋先生
士業の中でも実印を扱うことが一番多いのは、司法書士かもしれませんね。
電卓先生
電卓先生
日本で一般の方が実印が必要になる場面って、不動産の売買契約をする際や、ローンの借入をする時、遺産分割協議書にハンコを押す時くらいしかないかもしれませんね。
誠実先生
誠実先生
あとは保証人になる時も、保証契約書に実印を押しますね。
情報屋先生
情報屋先生
確かに、不動産のような重要な財産が動いたり、多額の金銭が動く場合など、実印が求められる場面で司法書士が関ることが多いので、司法書士と実印とのつながりが自然と深くなるのは納得がいきますね。

実印での本人確認。実印が今も重要視されている理由

誠実先生
誠実先生
実印には本人の意思確認を証明する意味合いもあるよね。実印が押されていたら、それが本人の意思によることの証明として用いられるけども、技術が進化した現代において、果たして実印での押印が本人意思の証明になるのかは疑問に思うところがあります。
電卓先生
電卓先生
そうですね、実印は先人の努力によって生み出された評価すべき制度だとは思います。しかし今の時代に実印で本人確認の意思を担保できるかというと、そうではなくなってきているかもしれませんね。
誠実先生
誠実先生
以前は複雑な形状にしておけば、偽造されるリスクは低かったと思いますが、今は3Dプリンタ等で印影から偽造印を生成するのも容易になってきていますよね。それでも実印での本人確認が重要視されているのは、“実印文化”を変えることに抵抗を持つ人が多いのも、一つの理由になっていると思います。
情報屋先生
情報屋先生
そうですね、日本には良くも悪くも保守的な文化がありますもんね。
電卓先生
電卓先生
文化的な問題もそうですが、今の実情だと、なんだかんだいってハンコって便利ですよね。便利なものをあえて不便なものに変える方向性には向かわないですよね。
誠実先生
誠実先生
実印での押印に代わる本人の意思確認には、どのようなものが考えられるかな?電子署名や指紋・顔認証とかがあるけど、ブロックチェーンが導入されると将来的にはそもそも本人の意思確認をするという場面自体がなくなるかもしれませんね

※ブロックチェーンとは、分散型ネットワークを構成する複数のコンピューターに、暗号技術を組み合わせ、取引情報などのデータを同期して記録する手法。一定期間の取引データをブロック単位にまとめ、コンピューター同士で検証し合いながら正しい記録をチェーン(鎖)のようにつないで蓄積する仕組みであることから、ブロックチェーンと呼ばれる。(引用元:「CoinDesk Japan」のホームページ)

情報屋先生
情報屋先生
ブロックチェーンが導入されたら、本人の意思確認する場面だけではなく、今当たり前だと思っている色々なものが無くなっていきそうですね。
電卓先生
電卓先生
そうですね。不動産登記手続はブロックチェーンの導入によって大きく影響を受けるものの一つかもしれませんね。

ハンコ文化はこれからどう変わる?

誠実先生
誠実先生
ハンコが電子署名に置き換わったら、単純に紙の文書が減って、文書管理が楽になるというメリットがありますね。あと、電子文書化が進み、電子署名文化が根付けば、オンライン登記申請ももっと進みそうですね。
六法先生
六法先生
電子署名だと、実印とセットで用意しないといけない印鑑証明書を用意しなくてもよくなるというメリットもあるッスね。
電卓先生
電卓先生
税理士業界では、実印が押印されている文書が必要となる場面が少ないので、オンライン化が進んでいるというのもあります。今はほぼ、申告書や添付書類はデータで送信して申告します。個人よりも、先に法人で電子文書化・電子署名化が進むと思います。稟議書を持ち回りで複数人がハンコを押すといったことは、どんどん少なくなるんじゃないですかね。
情報屋先生
情報屋先生
今は銀行で口座開設する際も、完全にオンラインで手続きができますよね。オンライン化はどの業界でもやろうと思えばやれそうですよね。登記の世界でも、法人を設立する際の印鑑届出義務の廃止についても議論がされていますね。あと、弁護士ドットコムのクラウドサインサービスの利用者も増えているようですね。
電卓先生
電卓先生
電子文書の場合は、印紙を貼らなくても良いというメリットもありますね。頻繁に契約書を作成する法人では、印紙代のコストを下げられるのは大きなメリットだと思います。あと、文書の電子化によって、紙の書類に比べて文書の検索効率も格段にアップしますね。
誠実先生
誠実先生
電子文書化や電子署名を浸透させるには、法整備が整えられたり行政の仕組みが変わることも必要ですね。民間で電子化を進めたくても、公的な手続きが電子化されないと電子化を推進するのは難しいですね。
電卓先生
電卓先生
そうですね、紙をただ単に電子文書に置き換えるだけという発想では、なかなか電子化は難しいですね。会計士の業務で作成する監査報告書は、今でも紙で作成して署名押印します。法律で押印が求められているものは、それに従うしかないですね。
情報屋先生
情報屋先生
確かに。”紙文化”であったものを電子化に伴って”電子文化”という新たな文化を創るという感じでないと、電子化の流れが進みそうにないですね。電子化のシステムを整えることは当然として、利用する人々の意識の変革も必要かも。
六法先生
六法先生
紙文化やハンコ文化が今でも根強くある理由って何なんスかね。モノを触っていたいっていう安心感もあったりするッスかね。あとは政治的な理由もあるッスかも。ハンコ文化を残したい、みたいな。
誠実先生
誠実先生
あと、電子化が進んだものの一つに、キャッシュレス決済があるよね。キャッシュレス決済自体は古くからあったけど、現金文化からキャッシュレス文化になってきたなと感じるのはここ数年のことのように感じます。今ある文化が、新しい文化へ移行するには、旧文化と新文化が平行する期間が必要かもしれませんね。ハンコを使うのか電子署名を使うのかは消費者に委ねると、自然とハンコか電子署名かが選ばれて使われていくかもしれませんね。
情報屋先生
情報屋先生
キャッシュレス決済は、現金決済にはない付随したメリットが沢山あるので浸透したというのもありますね。ハンコをただ電子署名に置き換えるだけでは、キャッシュレス決済のように一般に広がっていくのは難しそうですね。
六法先生
六法先生
国も企業も一丸となってキャッシュレス決済を推進していたから浸透したという側面もあるッスよね。
電卓先生
電卓先生
確かに。ハンコの電子化を頭を取って進めていく業界といえば、ハンコ(実印)に深くかかわりのある司法書士業界、不動産業界になるのかな。
誠実先生
誠実先生
法人も電子化によって享受できるメリットが沢山あるので、民間企業から電子化を推進する流れが強くなる可能性もありますね。
電卓先生
電卓先生
そうですね。企業内で認印が求められる文書については、近いうちに今よりももっと電子化が進みそうですね。
誠実先生
誠実先生
司法書士業界では、昔は紙での登記申請だけだったものが、今ではオンライン申請も一般的になってきたよね。でもオンライン申請の仕組みが出来た当初は、利用者がなかなか増えなかったね。時間はかかるかもしれないけど、登記申請が紙から電子化の流れになったように、ハンコも電子化の流れになるように思います。
電卓先生
電卓先生
個人が確定申告をする場合、書面での申告と電子申告を選択できますが、個人事業主の場合、令和2年度分より電子申告の場合の方が受けられる控除が多くなります。大規模法人では、電子申告が義務化されます。登記申請も、書面申請と電子申請で登録免許税額が変わるとか、オンライン申請でしか受け付けないとか、公的機関の側から変わっていくことも考えられなくはないですね。

今回は、ハンコ文化について4人の司法書士・公認会計士・税理士で話し合いをしました。「署名」「ハンコ」「電子署名」のメリット・デメリットについて改めて考えさせられたところもあり、今後のハンコ文化の行方を考える良い機会になりました。

「ハンコより電子署名の方が便利なので、ある程度の強制力を持って電子化を進める流れを支持する」
「電子署名は便利な面もあるけれども、現状ではそれと同じくらい不便な面もあるので、やはり今の段階ではハンコから電子署名へ移行するのは難しいのでは?」
「いくら民間で電子化を進めても、法整備が進まないと電子化は進まないので、まずは法整備を整えるのが先決だ」
「ハンコの電子化のシステムは整えておいて、ハンコを使うか電子署名を使うのかは消費者に委ねると、自然とハンコか電子署名かが選ばれて使われていく」

それぞれの考えを発信することで、とても興味深い議論をすることができました。

次回は「相続財産」について議論します!

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